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短編小説の集い「のべらっくす」

月1で出題されるお題に沿って短編小説を書く企画です。

【第25回】短編小説の集い「病」 総評

総評

 お待たせしました、今月の総評です。

 

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〇テーマを「病」にしたとき、最初の懸念は「精神病んだ系が集まったらどうしよう」だった。そういうわけで要項に「なるべく身体の病を書こう」と明記しておいたのだけれど、ふたを開けてみれば「草津の湯でも治せない病」のお話が多くてやっぱりやってみないとわからないところはあるよなぁと思った。

 

〇主催者の個人的な「病」のイメージですが、身体の調子が悪くなると心にも影響が出て視野狭窄と言うかそういうのに苦しむイメージなのです。それで話がよくもわるくも転がっていくというか、そんな感じです。今回「キュンキュンしたい」という言葉がいくつか見られたのでキュンキュンできるシチュエーションですと、例えば風邪をひいて熱を出した相手の家に看病しに行くというものや、それこそ一昔前に流行った不治の病でもう少しだけ……みたいなのもあります。どっちもベタすぎて倦厭されたのでしょうか。

 

〇今月は結構作品が集まった。閉店セールをしたからなのか、そうでないのかはよくわからない。ただ閉店セールをすると閉店セールをし続けることになるので閉店セールの看板を下げてガクッと集まらないようになった時は、本当にオワコンにするべきなのかもしれない。この企画は「続けること」というのもひとつの主旨なので、単発で「アー楽しかった!」で終わるのではなく「次はどうやって生かしていこうか」を考える場にしてもらいたいなぁと思うのです。

 

〇自身の振り返りをする暇があるかどうかわからないのでここで少し解説をすると、今回のコンセプトは視野の狭さとその原因です。私たちにとっての「普通」は一方から見ると普通ではなく、とても異質なものに見えるのです。「私は悪くない」と開き直って他人を傷つけ続ける人の視点にもならないと事象全体は見えにくいですね。あと太ったコーギーを散歩させている人をしばしば見かけるので、こんな話になりました。生きていく知恵や生活習慣を身に着けさせないのもある意味子供によくないと思います。

 

〇以下初回参加者とあらかじめ感想を頂いている方の主催者からの感想です。初めて参加された方が多く、ある意味新鮮な気分です。感想を書いてもらえるとみなさん喜ぶと思いますので、初回の方でもできたら感想も書いてほしいと思います。

 

【感想】

135.hateblo.jp

 

 いわゆる腱鞘炎から主治医に恋をするまでの話ですね。振り返りなどで「もっとドロドロしたのが書きたい」とおっしゃっていますが、これでも十分医師視点で見れば怖い話だと思います。「恋は盲目」のとおり、彼女の頭の中にいるのは「彼女の頭の中の主治医」であって、現実の等身大の主治医ではないのですから……この後、彼女がどうなるかはなんとなーく恐ろしい感じだなぁというのが第一印象です。あとオチが読めてしまうので「約一年前」のシーンから始まって、それから唐突に「好きだ」と気づく場面があったほうがドラマチックになるかなぁと思いました。

 

www.logosuemo.com

 

 初めましてこんにちは。新人類の誕生とその衰亡に纏わるお話ですね。熟考する時間がないとのことでしたが、同期できる脳をもった新人類と言う世界はとても面白いです。少し違いますが『攻殻機動隊』や『サトラレ』に通じるものを感じました。そこで、今度は人物を一人決めてその人の心情を中心にクローズアップされるような物語の進め方にされると更に小説っぽくなると思います。今回ですと、例えば神代の内面を描くことで新人類としての苦悩や決断の過程がわかるとシンクロンという存在の悲哀と彼の決断の滑稽さがぐっと浮き上がってくると思います。

 

noeloop.hatenablog.com

 

 初めましてこんにちは。友達二人のかけあいの話ですね。確かに「書きたいものをザザーッっと書いた」感じがしました。書きたいものがたくさんあると、何から書いていいかわからないんですよね。わかります。次回参加されるのであれば、お話を完結させることを目的にされると良いかと思います。今回の場合、できれば委員長に告白をするところまで進めると会話劇ではなくグッと小説らしくなると思います。コメディ色を気にされていましたが、実際に自分でキャラクターの通りに独り芝居をされると良いかと思います。自分で動ける範囲での描写にするとリアリティが増します。それにしても自分の頭の中のものが形になったときの嬉しさは大きいですよね。その楽しさのおすそ分けをこれからも期待します。

 

syousetu.hatenadiary.com

 

 仮面をかぶってしまった少年のお話ですね。かなり文章が安定されています。展開も無理がなく、問題解決までの流れも自然でひとりの少年の成長譚としてよいと思いました。欲を言ってしまうと、迫田サイドのストーリーがあると更に人間臭い話になって面白いかなと思います。子供の目から断片的に語られるだけではなく、当時は周囲からどんな評価を受けていたのか非常に気になります。仕事の出来ない奴ならただの最低野郎ですし、出来ると言う評判であるならかなりひどいモラハラ野郎ですね。この場合後者だと更に無理のない展開になるかなぁと思います。惜しいところはやはり「演劇病」という言葉がなくてもこの話が成立してしまうと言うことですね。大げさに風邪をひいて困っているシーンなどがあるとよかったような気がします。

 

novels.hatenadiary.com

 

 ある意味社会の理不尽の話ですね。主軸は善悪の置き場所だと思うのですが、書きたいことがたくさんありすぎて焦点がぼやけてしまっている気がします。世界残酷物語がしたいのか、仇討の正当性を説きたいのかが混在しているので加奈子のキャラクターが浮いてこないのかもしれないです。性行為や残酷な描写はあってもよいと思うのですが、「ただそういうシーンが書きたかったんだな」という印象になってしまいがちなので物語の必然性を考えて場面を絞るとよいと思います。例えば前半で登場した拒食症の女など、小道具ではなく彼女の思考に変化を与える存在などにすれば物語らしくなります。

 

author-town.hatenablog.jp

 

 初めましてこんにちは。まず、タイトルがとってもいいです。全部読んでわかることですが、この「病気」というのは「理解できない」という意味もかかっていると解釈しました。亡くなった父の背中を見て同じ道を歩いている主人公を見て、妻は「ぜんそく」という意味と「小説なんて酔狂なことを」という意味で病を抱えて執筆を続ける主人公を冷ややかに見ています。このダブルミーニングがいいですね。また入れ子構造が唐突だったので、主人公に「これから執筆をしよう」「前回は吉川がこんなことをやっていたと思い出した」「この先の展開をどうしよう」などとつぶやかせるだけで読者もスッと劇中劇を楽しむことが出来ると思います。

 

masarin-m.hatenablog.com

 

 毎度ありがとうございます。舞台は病院内だけの小さな世界ですが、世界中の写真を撮る話など決してスケールが小さいわけではない世界がいいですね。そしてまさりんさんの風景描写力がよく出ていると思いました。入院中に一緒になった小杉さんの人となりが主人公の視点で語られていくのですが、エピソードが説明に偏ることなく病院関係者などの心情も無理のない範囲で描かれていて、安定感があります。ひと波乱起こすのであれば、主人公を観察者に徹しさせるのではなくあえて小杉さんと反発するような性格の持ち主にしてやると面白くなるかなとは思います。

 

diary.sweetberry.jp

 

 毎度ありがとうございます。今月は謎解き要素がありますね。その上で正直な感想を述べますと、オチで割と拍子抜けしてしまいました。おそらく前段のおどろおどろしい雰囲気が途中で抜けて、ラストはその余韻がなかったことになってしまったからだと思います。あとは「恋する女の子」のリアリティを動悸だけに頼ってしまったことで読者から見ても「ただの病気」にしか見えなかったのもあるかもしれません。少しでも冒頭に実際の肝試しの現場の描写があると登場人物がわかりやすくなり、オチが引き締まると思います。

 

※感想は記事を確認次第随時追加していきます。