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短編小説の集い「のべらっくす」

月1で出題されるお題に沿って短編小説を書く企画です。

【第23回】短編小説の集い「虫」 総評

総評

 夏の虫がほぼ退場したところで、今月の総評です。

 

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〇夏休みの宿題効果か、今月は初めての方を含めたくさんの皆さんに参加して頂いて嬉しい限りです。テーマとして難しいと思っていたのですが実体のあるものが書きやすかったのではないかと思います。

 

〇テーマ「虫」についてですが、やはり人間より寿命が圧倒的に短く脆い存在と言うことで「死」と結びつきやすいのでしょう。実際サルバトール・ダリは自身の作品にアリを好んで登場させ、死を演出していました。死者に群がるそれを分解する虫や、「なんでホタルすぐ死んでしまうん?」に代表されるひと夏しか生きられない生態。そのために子供たちの死のお手本になってしまう夏の虫たち。そんなところが人をノスタルジックに誘い、様々な物語を生むのかもしれません。

 

〇また綺麗な蝶や光る甲虫の話はあまりなかったことからも、虫は嫌悪の象徴になりやすいようです。「虫けら」「虫唾が走る」「虫が好かない」と言葉の上でもあまり良い意味では使用されないばかりか、外国では蠅を悪魔そのものにしてしまっているところもあります。ベルゼバブも元々現地人の「蠅を取る神」が蠅そのものに貶められてしまったものらしいですが、どっちにしろ蠅は不衛生で病気を運ぶので嫌われ者です。そんな明確に方向性の定まった感情からは物語も生まれやすいですね。

 

〇あとトンデモだろうと何だろうと気に入っているのが「昆虫エイリアン説」。つまり蛹や脱皮など変態をする奇妙な生き物は地球の生物の真っ当な進化からは外れていて、宇宙からやってきた地球外生命体が独自に進化した結果だなんだという話。それだけ昆虫はありふれた存在でありながら脊椎動物とは程遠い存在であるということなんだろう。あの何を考えているのかわからない表情も、そんな気にさせる。

 

〇如何にも情緒豊かなものより、何を考えているかわからないほうに背後の物語を見出してしまうのが人間かもしれません。そう考えるとみつばちマーヤとかみなしごハッチとか虫を擬人化している作品は他の動物の擬人化より大変だったのかなぁと思います。虫、深いよ虫。

 

〇全く関係ないのですが、北朝鮮関係のニュースを見るたびに「新種の虫か珍しい野生動物みたいな報道の仕方だな」と感じます。「衛星写真によるとミサイル開発を~」「公式発表から推察するに~」など、今にもヒゲじぃが「ちょっと待った!どうしてそんなミサイルなんて作るんですか危ないじゃないですか!」「でもねヒゲじぃ、これには訳があるんですよ」みたいな。一寸の虫にも五分の魂というか、全てのことにはそれなりの因果があると思っています。別に北朝鮮に限った話ではないのですが。

 

〇今後の予定としては、10月11月は普通に開催して、12月は例年恒例の年末年始のテーマになります。1月は短編小説の集いはお休みしようと思いますが、また夏休みの宿題のように簡単に出来そうな企画も考えておきます。それではまた次回お会いしましょう。

 

【感想】

www.waka-macha.com

 

 はじめましてこんにちは。初めてなんですが、率直に書いていきます。このような企画に参加すると大体作品の裏に「どやぁ、褒めて褒めて」という言外のメッセージがあるもので主催者はそこを膨らませて感想を書いているのですが、この作品にはそれがほとんど認められないのです。恐ろしいまでに作品の中で完結してしまっていて、この作品そのものが他人から良し悪しを評価されることを拒んでいるようなのです。「ぼくの書くものはかなり迷惑になるんじゃないか…」と仰るとおり、この作品は今までの作品の中でかなり異質です。もちろん「迷惑」というわけではなく、ここまで作品世界を外界からシャットダウンして完結させるのはやはり書くことを愛していないと出来ない芸当かなぁと思います。作品について触れると、数学者の生き様がかなり断片的に触れられていて「本当に生きていた」という感じがしないのです。「次世代の命=数式」を生み落してひっそり消えていく彼自身の顔が複眼で構成されている気がしてなりません。

 

lfk.hatenablog.com

 

 途中まで「虫要素はどこに……?」と心配していたのが杞憂に終わり、オチでフフっと笑ってしまいました。これ以上もない「虫」。ヴィジュアル要素があるということでちょっと反則なような気もしますが、オチが素晴らしいのであまり気になりません。会話劇メインということでもっとわかりやすくても良かったかな、ということであればせっかくのパロディなので兜ネタに限らずわかりやすいパロディを散りばめると飽きなかったかなぁと思います。ホテル座間・オケハとか墨俣プロジェクトの炎上騒ぎとか、そんな感じになるんでしょうか。完全に思いつきですすみません。

 

blog.monogatarukame.net

 

 はじめましてこんにちは。交尾後に食べられるカマキリをベースにした話ですね。一人称で書かれているためにかなり一元的な見方しかできないのですが、最後の一文で「男を手玉に取っているつもりの子供っぽい女」という印象を受けました。何故なら、これは全て彼女の独白であり、「私は彼より上にいる」という事象を裏付ける具体的な彼からの行動がひとつも見当たらないからです。つまり「私は彼より上の存在」ということを常に言い聞かせていないと気が済まないか、そう思い込まないとやっていられないほど追いつめられているかのどちらかのような気がするのです。物語の論理だけで言うとカマキリがオスを捕食するのは産卵のエネルギー補給のためらしいので、子供がいらないという彼女がオスを食べたがるのはやはり身勝手、未成熟な恋の形のように見えます。そんな不安定で独りよがりな思考も寝乱れたシーンらしくてなかなか良いと思います。

 

masarin-m.hatenablog.com

 

 毎回参加ありがとうございます。今回は時間がない中仕上げられたと言うことで納得のいかないところがありそうなのですが、非常にテーマが際立っていて良いと思いました。「生き死にくらい自由にしたい」ということが前半の寺や墓の風景描写と、後半の蟋蟀の話から浮かび上がってきます。「数学に挑戦し続けた結果妻に逃げられた男」の独白と言うことで、実は価値観が全く衝突していない独りよがりと言うところでしょうか。後半の言葉が前半に比べて直情的でもう少し時間があれば前半と後半と馴染ませた展開が出来たかもしれないと思います。独白ありきなので難しいと思いますが、「俺は悪くない」と男が言っているのだろうなということを読者に想起させられる描写が増えると男の人間味が増すと思いました。もっと身勝手で自分を正当化させてもいいと思いますし、犬の口を使って世間の代弁をさせるのもアリです。

 

diary.sweetberry.jp

 

 毎回参加どうもです。客観的に見れば非常に無理のある話なのですが、なおなおさんの説得力がかなり上回ったと思います。虫嫌いが夢の中で虫になると言うお話で、しかもそこにあるのが幻ではない生々しい生と死であるというのが非常に面白いです。自分も胡蝶の夢を習ったときに蝶が嫌いなので「蝶になるなんて御免だ」と思ったのでその嫌悪感はどこへ行くのだろうと不思議に思ったものです。「生理的嫌悪」というものの中に「性嫌悪」も含まれていそうで、もっと掘り下げるといろいろ読み込めると思いました。一連の出来事が彼のセクシャリティーに何か影響を及ぼすのでしょうか。

 

※後は振り返りなどが確認でき次第追加していきます。