短編小説の集い「のべらっくす」

こちらでの募集は休止になりました。今までありがとうございました。

【特別企画】「なつやすみの宿題 納涼合宿」 総評と感想

 夏休みもすっかり終わってしまったところで納涼合宿の総評です。

 

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〇自分が民話の世界に興味を持ったのは昔流行っていた「トイレの花子さん」などからで、それが地域や年代によって話の内容が変わるというのが非常に面白かったから今もこうやっているわけです。

 

〇今回の作品はそれぞれに「怖いもの」を持ち寄ると言うより、どう描くと怖くなるかを考えながら書かれた作品が多いと感じました。怖さと言うのは演出で相当に変わってくるのです。 そして恐怖の演出には引き算が大事で、同じ情景でも「髪の長くて白い着物を着た妙齢の女性が髪を振り乱して襲い掛かってきた」と書くより「白いものが動いた。髪をふり乱した女だ」と書いたほうが臨場感が出る。怖い雰囲気を伝えようとするあまり作者が情景を細かく書きすぎても読者の想像の余地が引き出せない。恐怖を伝えるところの難しいところだ。

 

〇今回の感想は語り手が誰かという点を中心に作品を見ていきます。誰が誰に何を話しかけているかというのも怪談を見るときのポイントで、それぞれの状況に合わせた語り口が必要になってくる。基本は引き算の演出で、最大限読者の想像力を喚起させるとより恐怖が倍増する、と主催者は思っている。

 

【感想】

nerumae.hateblo.jp

 怖い話と言うより奇妙な話、怪奇譚ですね。目立った幽霊や怪現象はないのですが、語り手が頑張って「場末のスナック」の様子を再現しようとしているくだりが非常に好きです。大体怪奇譚において「俺と後輩で、そいつは本当はタメだけど二浪しててさ」というような人間関係をはじめとした詳細な前置きは本編と関係なかったりするのですが、そのパートも含めて「人間の語るもの」というところが生々しくて好きですね。ここが怪異と関係なければないほど最後の突き放す「あれは何だったんでしょうね」が生きてくると思います。

 

www.kana-ri.com

 正統派な体験談、つまり怪談ですね。語り手が直接体験したことを語ると言う図式が一番王道で、「本当にあったこと」と聞き手が納得しやすい構造になっています。語り方も盛り上がるところで短文を畳み掛けるように心情と様子が交互に現れていて臨場感がありました。踏切のないところの線路、というのは川の橋のない部分のようなもので更に夜と朝の境目にそこを超えるのは異界へ踏み入れるという意味で危険なのでしょう。そんなメタな読み方も出来て面白かったです。

 

diary.sweetberry.jp

 学校での肝試しというシンプルな場面設定ながら、「あかいかみ」をキーワードにふたつの逸話を盛り込んで、「カツーン、カツーン」という音で場面を転換させていたのがよかったです。更にこれが「いとこの友人のお姉さん」という微妙に遠い世界の話で、ところどころ伝聞になっているのがポイント高いです。目の前の語り手の直接体験も怖いのですが、語り手すら影響の及ばない第三者の体験談というのも、どうしようもない不合理を感じて怖いんですよね。 

 

masarin-m.hatenablog.com

 怪談というより、ホラーミステリーの印象を受けました。謎があって、解決できる道が見えるのに最後に不条理な展開が待ち受ける。ノベルゲームのバッドエンドのような後味でした。「本当に恐ろしいのは実は人間」という話なのですが、語り手が物語の中で戦線離脱してしまっているので核心に迫りにくい気もしました。出来ればきちんと真相を聞いて、その上で激しく絶望してほしいという気もしました。でも語っているのが「鬼」なので、全て信用できないところも読解の幅が出ていますね。

 

kalkwater.hatenablog.com

 怪談と言うより「怪文書」に近いと思いました。「怪文書」もなかなか怖いもので、「誰が何のために書いたのかわからない」というのはそれだけで怖いものです。未解決事件に関連づけられた意味の分からない手紙(ほとんどがイタズラらしいですが)や世界の解読されていない暗号など、正体のわからないものはそれだけで気味が悪く恐怖の対象になります。更に体験談などではなく語り手の視点として「この文章を読んでるあなた」に例外なく語りかけている点も怖いです。ラストは有名な怪文書「全く意味が分かりません」を彷彿とさせます。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 自作なので軽く振り返ると、何が怖いのかあからさますぎてイヤらしいなぁと思いました。最後のランチの描写が唐突なので浮いてしまってるんですね。でも、それくらいしたほうが種明かしになるかなぁと思うのですが、どうでしょう? ちなみに、この部屋の中にはちゃんと「何かいる」ことになっているのでわからなかった人はもう一度読んでください。こういうところがイヤらしいのです。