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短編小説の集い「のべらっくす」

月1で出題されるお題に沿って短編小説を書く企画です。

【第14回】短編小説の集い とりまとめ

総評

 寒いですね、そろそろ冬も始まりの空気が漂ってまいりましたと言うところで今月のとりまとめです。

 

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karasawa-a.hatenablog.com

 

 はじめましてこんにちは。食事をとる時間がずれてしまう夫婦の話ですね。非常に丁寧な描写でおいしそうな食卓の風景が想像できました。また、夫婦の人間関係も素敵で、互いを思いやっているのが容易に想像できて、食後のお茶のような優しい空間を創っています。特に読者に見せたいものを過不足なく魅せることで逆転するひとつのお話の面白みがギュッと詰まっているようでした。

 

syousetu.hatenadiary.com

 

 SFですね、「人間の本能」に関するディストピアからの脱却ですね。『ハーモニー』まっしぐらな感じがよかったです。序盤の「当たり前」が後半に進むにつれて疑念に変わり、最終的に「地球」及び読者に疑問を投げかけるスタイルがスタイリッシュで面白かったです。あとは「謎肉」というキーワードが中身と釣り合わず俗っぽい印象を与えているかなぁと思ったので、「謎の肉」と固有名詞にしないか、タイトルは「惑星ラウレンティスの生物」など「肉」を隠して内容で勝負するのもアリだと思います。

 

diary.sweetberry.jp

 

 収穫祭のカボチャから元気になるお話ですね。食べ物の話から人間を扱うという話につなげる無理のない展開がよかったです。特に最終段落に繋げるためにカボチャの料理を3つ具体的にあげたところで「どこか鬱々とした気持ち」→「食への興味」→「生きる喜び」のように主人公の気持ちが徐々にプラスの方向に向かっていく過程が見えたところが上手だと思いました。おいしいものは人を幸せにするんですね。

 

donutno.hatenablog.com

 

 食通のとある客のお話ですね。ミステリアスな雰囲気のお客と、いろいろと鈍い店主のやりとりが的確に表現されています。惜しいところは「亡くなった父」と客が明言してしまっているため、読者は物語の真相にたどり着けそうなのに対して店主が何一つ察していないところです。ここで店主に感情移入していた読者がスっと離れてしまうので、店主も客の正体に気が付くか、あえて「息子である」というような描写をなしにしてレシピの並びだけで匂わせて終わりにすると展開がよりくっきりと見えると思います。

 

masarin-m.hatenablog.com

 

 先生の人柄にほれ込んで食客になるお話ですね。「食客」というのは客としてもてなされる代わりに主人を助けるもので、その「先生」はよっぽど人を惹き付ける何かを持っていたんでしょう。できれば今回の話はダイジェストのようになってしまった感じがしたので、欲を言えば前半の祖父の家の描写を削って過去をクローズアップしたり繊細な「食客」関係のエピソードをもうひとつ盛り込めればよかったかなと思います。

 

kannno-itsuki.hatenablog.com

 

 柘榴の木と実を中心としたお話ですね。遠くトルコからやってきた果実と、遠く満州に旅立つ先輩を想うお嬢さんと気が付かない先輩、その関係に気付きながらも触れられないでいる主人公のバランスが見事です。また話の中心が柘榴を食べながらではなく、水羊羹を食べながらという点も広がりがあっていいです。柘榴と言えば伝承の多い果実で、冥府の食べ物だったり人肉に近いなんて俗説もあったりするので、そういう果実だと思うとこの時代を生きた登場人物たちの末路が非常に不安になります。

 

tokimaki.hatenablog.com

 

 人生の半分を過ぎたラーメン屋主人が店をたたむ物語ですね。物語の最初に「車椅子バスケット」を観戦しているところから始まって、食べ物の触感や香りだけを楽しむところで違和感をさりげなく演出し、少しのズレをさりげなく小出しにして落とすのは高度な演出だと思いました。また、食べるものから「味」を抜き出して描写すると言う制限がよりリアルな世界を生み出していて、非常に面白かったです。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

 最後にいつも通りの宣伝作品です。「食」っていうのは個人的な欲求であると同時に、一緒に食べる人の様相で味も変わってくると言うのが思うところであるという形を作ってみました。たくさんのごちそうも毎日ひとりぼっちで食べていたら「食」の営みの半分が別のところに行ってしまっていると思うのです。あの家族の団欒の雰囲気含めてが「食」だと思うという感じです。

 

 

 総評は「食」というテーマ上、生きるということに直結してそれぞれの人生観のようなものも垣間見えたのかなぁという印象です。「食べる」ということは味覚の他に五感をフルに使うので描写することも多く、更に読む人にある種の同一の感情を引き起こします。つまり「おいしそう」とか「お腹が減った」とか、そういうのは個人の趣向があまり関係なく出てくるものです。そう言った本能に訴えるお話が書ければいいのかなぁと今回は思いました。

 

 また今回は参加者が少なく、実生活で充実していることが伺えました。それ以外でも「小説も書いてみたいけど下手だから」とコメントしている人はよく見かけます。そういう人の背中を押す企画ですし、そのための「初心者枠」です。文章が下手かどうかを決めるのは自分ではなく、読んでくれる人だと思うので自分で下手だと思っているのは勿体ないと思います。そういうわけで「参加しようと思ったけど恥ずかしいから辞めた」と名言してしまうのは主催者として残念な気持ちでいっぱいです。

 

 それでは作者の皆さん、お疲れ様でした。また来月のお題でお会いしましょう。