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短編小説の集い「のべらっくす」

月1で出題されるお題に沿って短編小説を書く企画です。

【第11回】短編小説の集い とりまとめ

 お待たせしました、今月のとりまとめです。この「短編小説の集い」も気が付けば第0回から始まっているので通算12回目となり、丸1年続いてしまったのですね。皆勤賞の人は5000字×12か月ということで60000字も小説を書いてしまったのですね。すごいですね。それではいつも通りやっていきます。

 

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sakuramizuki20.hatenablog.com

 

 夏祭りでりんご飴を買う話ですね。一番乗りどうもです。確かに主人公たちがかなり幼く見えるんですね。いろいろ原因を考えたのですが、キャラクターの思考を先回りして表現してしまっているからだと思います。これからの行動を台詞で説明してしまっていたり、地の文で気持ちを直接書いてしまっていたりと「全部説明しなくては!」という意気込みが全体的な幼さを誘っているのではないでしょうか。例えば直樹の視点のみで真相がわからないまま失恋の気持ちだけをクローズアップするなど、魅せたいところを見せる山場が大事なのかなぁと思います。

 

isseihaduki.hatenablog.com

 

 キツネ面の不思議な女の子の話ですね。物語の山場が見えやすく、明快かつベタなストーリー展開に読者が安心して読める基本が抑えられていると思います。ストーリーの骨格がしっかり出来たら、次は描写の肉づけができるといいと思います。例えば「きつねのお面の女の子は周りの大人子供に混じって上手に踊っている」の部分を「風をきって颯爽と踊っている」や「見るものを魅了するような優雅な踊り」など様子を詳しくする表現を工夫するだけで文章がカッコよくなってきます。

 

baumkuchen.hatenablog.jp

 

 夏祭りで「好きだってことが言えなかった」お話ですね。非常にどこかにありそうなんだけど、キレイすぎて多分どこにもない世界。この「夏祭りの思い出」というのは普遍的な願望で、その願望をどれだけ視覚的に丁寧に書けるのかがこのテーマのキモだと思っています。浴衣で花火大会っていうのはスキーと一緒で、ゲレンデにいるから相手が余計輝くのかもしれません。そして最後の段落の視覚描写にこだわった情景描写は素敵です。決して彼の気持ちをストレートに書かないところに、優しさを感じました。

 

yutoma233.hatenablog.com

 

 お祭りに行く約束をすっぽかされそうになったお話ですね。2人の距離感がテーマのようなので、これはこれでいいのかなと思うのですが、現在と過去を行ったり来たりするので状況の把握がしにくいのが難点でした。真夏の夏祭り会場でいきなり冬の寒い朝という反対の場面に飛ぶと読者は混乱して、夏祭りだったはずなのに冬の朝のインパクトのまま話を読み終えてしまうので回想をきちんとするのではなく「そういうこともあった」とひとことで表現してしまったほうが最後まで祭りの余韻が崩れることが亡くなると思います。その辺の「魅せる削り」は難しいのですが、是非挑戦してもらいたいです。

 

literary-ace.hatenablog.jp

 

 お祭りで人違いの末の葛藤のお話ですね。「お祭り」っていうのは浮足立って誰もかれもが思いもよらないことを言ったりやったりするんですよね。引っ込み思案なヤマウチと快活なヤマナカ。そんなヤマナカにヤマウチは羨望とも嫉妬ともつかない感情を抱えていて、年頃の男の子にしてはそういう感情に疎いヤマウチは同級生の「恋愛」という未知の感情にびっくりして、混乱している……そんなお話を読み取ったのですが、よく読んだらこの2人は「桜の季節」の時の登場人物ですよね? 無色透明だったヤマウチが少し大人になってくれてよかったです。

「願い桜」(第6回短編小説の集い 参加作) - 空想少年通信 

 

zuisho.hatenadiary.jp

 

 祭りおじさんと「居場所」のお話ですね。最初は「どうしようこれはセーラー服着たおじさんみたいな妖精さん系だ」と一瞬焦ったのですが、妖精みたいなおじさんだってちゃんと「居場所」があって、その居場所がどうにもなくなれば現実ではなくファンタジーを生きてしまうんじゃないのかなって思いました。でも祭りおじさんは「居場所」を失くして「祭りおじさん」というファンタジーを演じきることができなかったし、浩介は「転校生」と「お祭り」というファンタジーを未だに彷徨っている。そんな風に読むと「おじさんちゃんとしてたつもりだったんだけどな」が妙に心に刺さるのです。

 

lfk.hatenablog.com

 

 インターネットの「祭り」のお話ですね。これは発想の勝利です。こういう縁日の出てこない「祭り」を期待していました。ネットや特に2ちゃんねるのスレッドが人気になって、いつしかそれが「物語の形態」の一つになってしまっていると思うのです。それが認知されたのが「電車男」で、それからネットでは「会話のみの脚本ではない物語」が主流になってきました。この手の作品はキャラクターを何人も自分の中で創って延々と内輪ネタにならない程度の独り芝居が出来ないと難しく、気軽に作れる割には難易度が高いです。そしてきちんと「祭り」を外から眺めている視点があることで「祭り」が「祭り」として認識される。このメタ視点が今日の物語形式に大きな影響を与えていると思うのです。

 

kazagurumax.hatenablog.com

 

 はじめましてこんにちは。怪しげな土地に迷い込むお話ですね。青森にキリストの墓伝説があるのは本当の話で、お祭りも実際にあるものなんですよね。更にキリスト教でリンゴと言えば「知恵の実」で、蛇がそれを食べさせようとして、更にその「知恵の実」をモチーフにしたのがあのリンゴマークの会社というのも全てつながるのがいいですね。子供が「ちろちろ」と舐めているのも実に蛇っぽくて面白いです。全体的にはタヌキやキツネに化かされたような読後感なのですが、この場合化かしたのは蛇なんでしょうか。

【キリストの墓】青森キリスト祭2014まとめ - Togetterまとめ

 

 

buntenka.hatenablog.com

 

 はじめましてこんにちは。日本の「祭り」に関する陰謀のお話ですね。「平和の祭典」のオリンピックをはじめ、「祭り」のグルーヴ感に心酔する人々が非常に滑稽に描かれていて面白いです。これは物語を楽しむと言うより、その状況で起こりうる様々な小ネタにクスリと笑うタイプの作品だと思いました。「3rdゴシック・ジャズやリベラル・ドープなどのニュアンスを取り入れた「民族音楽」」や「往年の名選手の霊を憑依させたと主張する俊足のイタコ・ガール」って一体何なんだと思いつつ、何か納得するものがあって実に趣深いです。報告書形式をとるなら、結論を先に書いたほうがとても読み易く、結末に向かって更に過程を楽しむこともできるかなと思います。

 

chihiron-novel.hatenablog.com

 

 ご本人の言うとおり、うじうじしたカップルのお話ですね。すれ違う状況や気まずい雰囲気など「あるある!」の連続で、多分今回一番人間臭いお話だったんじゃないかと思います。何よりもこのお話の中心は「空白の6年間」だと思います。6年って結構長いですね。小学校に入学した子供も卒業するくらいの時間を、何の交流もなくお互いに想い続けて(慕うという意味だけでなく)いたというのは驚愕すべきことだと思うのです。ただ、6年もあればお互いに別の惚れたはれたがあったんじゃないかと思うとこの結末は別の意味があるのかもしれないと思いました。

 

hjsmh.hateblo.jp

 

 やきそばを求めるお話ですね。 不じさんのお話は基本的に「ありそうで本当にありそうで、でもない」という掴みどころの難しいお話が多いのですが、今回はしっかりヤマがあって「やきそば」を中心にストーリーが展開されていたと思います。何より非現実の描写がかなりリアルに迫っていて個人的に好きです。身体的に解放されたところから始まり、次々と視覚的に刺激的な光景が映って、更に少し後ろめたいものが見える。この「夢」の感覚が本当に「夢」っぽくて好きです。オチも少し味のあるものですが、かといってくどくなっていないのもよかったです。

 

nerumae.hateblo.jp

 

 祭りの空気の中、性的に倒錯したお話ですね。「祭り」には「的屋」がいて、それには小指を落とす人々がつながっているのですが、あんまりそういうことはみんな考えないんですよね。この人たちは日常は表に出てこないで、非日常の祭りに合わせて見える場所にやってきます。「指がない」人が「光る腕輪」を打っているというのも興味深いと言うより、何となく滑稽に見えます。そしてこの少年は指フェチというより「欠損フェチ」で、「幻肢痛」とかそういうのに悶えているんじゃないかと思うと幸せな人生を歩んでくれとしか言いようがないです。永遠に満たされることがないのがフェチの基本だと思うのです。

 

masarin-m.hatenablog.com

 

 悩める少年と伝統芸能の話ですね。「9月1日図書館」の件については非常にデリケートな部分があるので置いておきますが、やっと「伝統芸能」の「祭り」が来たと思いました。さすが安定のまさりんさんです。祭りって言うのは「非日常」であり「ハレ」の日であり「ケ」をはらう日です。多分現代社会って言うのは全部が全部完璧な「ハレ」を要求していて、「ケ」をはらう暇がないのだと思います。最近は多分シンイチは「ろくでもない日常」を祓ってもらえたと思うので、彼は少したくましくなったと信じたいです。

 

roland29.hatenablog.com

 

 はじめましてこんにちは。祭りの会場で起きた壮絶な痴話喧嘩のお話ですね。登場人物全員に救いがない。娘の無邪気さが救いとなればよかったのに、その無邪気さが仇となって祭りの中で起きる凶行を誰も止める者がいないと言うのが悲しいですね。少し人間関係が込み入った話なので、できれば全員の続柄を「夫」「元妻」「現妻」「娘」みたいにさらりと最初に紹介してもらえるか、視点をだれか一人にしぼったほうが話に入って行き易かったかなと思います。あとタイトルがわかりにくいという件ですが、翻訳ものという意識があったのであればもう少し翻訳した文章っぽくするとよかったかもしれません。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

 最後に恒例の自作です。今回は「猫」の時と同じく七転八倒して本気でのたうちまわりながら書きました。だから「猫」に何となく似ています。ついでに言うと「はてな村怪談」にも似ています。ちなみにテーマは若者のモラトリアムではなく、あの世とこの世の狭間の世界というものです。あと祭囃子のグルーヴ感とミンキーモモのお面が出したかっただけです。例によって「盆踊りとは何か」と中心にいろいろ仕込んであるので探してみてください。

 

 

 

 

 それで今回の頑張ったで賞は「短編小説の集い「のべらっくす」第11回に参加 - Letter from Kyoto」です。「祭り」というテーマで縁日から離れたところでもう決定的です。普段の発想から視点を変えると言うのは大事だと思います。次点は国語的読解のメスを入れたら止まらなくなりそうな「【読み物】祭りおじさんと浩介 - ←ズイショ→」です。国語の教科書に載せて高校生あたりに読ませて混乱させたいです。

 

 それから初回から「今月の頑張ったで賞」を勝手に出してきたのですが、選ぶのが大変になってきたので今月で最終回にします。もともと「コンペ」を意識して作った企画だったので、それの名残です。それも今回で区切りがいいのでやめにしようかなと思います。みんなちがってみんないい、です。

 

 また、今月は全体的に登場人物やストーリーの類似が多くみられました。やっぱりパッと思いつくものはみんな一緒だと思うので、情景描写で頑張ってオリジナルを出すもよし、「祭り」から更に発想を膨らませて更にオリジナルを目指すもよし。いろいろあると思うので是非縁日をテーマにされた方は今月の「文章スケッチの広場」にも参加してみてください。

 

 更にお知らせです。9月で「短編小説の集い」は1周年を迎えます。そこで「のべらっくすに寄せて」という自由エッセイを募集する予定です。「のべらっくすに参加して思うこと」や「私の短編小説の書き方」、更に「読み専門だけどのべらっくす参加者のこの人に愛を捧ぐ!」など「のべらっくす」に関する内容なら何でもアリのお祭りです。正式な告知記事は10日頃出そうと思うので、それまで皆さん下書きでニヤニヤしておいてください。

 

 それではまた、1周年のテーマでお会いしましょう。