短編小説の集い「のべらっくす」

こちらでの募集は休止になりました。今までありがとうございました。

【第6回】短編小説の集い とりまとめ

 はーい! お待たせしました、今月のとりまとめでーす!

 今回は締切直前にインフルエンザになるし年度が新しくなってちょっと忙しくなったりでどうなることかと思ったけれど、企画がにぎわってくれるのが一番元気をもらえるなぁと支えられていることを感じた次第です。さてさっそく行って見ましょう!

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

 

ronpoku.hatenablog.jp

 久しぶりのろんぽくさんのお話は雰囲気が変わらず、というか更に突き詰めたところがあって素敵だなぁと思いました。桜からコノハナサクヤヒメ、そして燃え盛る産屋での出産エピソードをろんぽくさん風にアレンジした今作からは「強い執着」以上の「妄執」のようなものを感じました。短い言葉で畳み掛けるような表現が更に読者を追い詰めるところが静かに燃える心を駆り立てますね。

 

lfk.hatenablog.com

 こちらで感想を書くのははじめまして。三人称が難しいとのことでしたが、多分「僕」をそのまま主人公の名前にすれば立派に三人称になる文章だと思いました。「川崎」の話ですが、彼の不可解な内面を直接書かずに語り手の視点から一見理解不能であろう川崎の心理を読者に想像させると言うのは立派な物語の語られ方であると思います。将来地下鉄で化学兵器をばらまきそうな川崎が心配ですね。

 

ktmk.hatenablog.jp

 な、なんだってー!? という台詞が似つかわしい話だなぁと思いました。ものすごく突拍子もない考えなのに、それを信じて最後まで押し切ってしまうという書き方はいいですね。とにかく桜前線を神様が追いかける(と主人公が思っている)設定が面白いです。『妖怪ウォッチ』とかその辺の子供向けアニメの一幕としてあってもいい感じだと思うのです。

 

sampo.hatenablog.com

 信仰のズレが生む人間関係の破たんが静かに展開されています。Mがマグダラのマリアということでそういうことになるのかなと思えばそんな感じだったので安心して読めました。それから、マドレーヌから始まる物語と言うとプルーストの『失われた時を求めて』がまず思い出されます。こちらは人間と同性愛の業をぐわっとながーく書いたもので、源氏物語と同様長くて力尽きる人が多い作品です。自分もその一人です。本当にいつか全部読みたい。

 

tsubuyaki.hateblo.jp

 花粉症をテーマにじっくり最後まで書かれています。テーマを絞ることで作者の意図が明確になって、同じ花粉症に悩む方には「あるある」という共感が得られるのかなと思います。自分は残念ながら花粉症ではないのでこの作品とリンクすることはできませんが、花粉症の悩みを抱える人の気持ちを考えることが出来ました。花粉から解放された鈴子の気持ちがもっと劇的であると最後の爽快感が増したと思います。

 

yama-aki1025.hatenablog.com

 小さな気持ちのぶつかり合いが最後までラリーのように続く作品だなあ、というのが第一印象です。一人称であるので事態を詳しく描かないことで心情の動きをクローズアップできたのかな、と思います。結婚前に昔好きだった人に再会するのは意外とエグいと思うのですが、そこに軸を置かずにあくまでも過去の関係は過去のものと割り切っている感じが大人っぽくでいいですね。こういうのは書いている本人の倫理観が透けてしまいがちなんですが、最後まで登場人物の気持ちに寄り添っているのもいいと思います。

 

bambi-eco1020.hatenablog.com

 えこさんのほんわかじーんなお話。でもさりげなく最初と最後の景色を「入学式」「卒業式」、「泣いていた颯太を慰める莉子」「泣いている莉子を慰める颯太」と逆転させることで物語の余韻を作っていることで着地点を決めて書かれていることが伝わってきました。描写の細かさに「魅せ方」という観点が入ってきてひとつ世界が深くなったと思います。同じものを書いても最初と最後で意味が違うというのはひとつのお話の作り方の王道ですし、主人公の成長という点でも素晴らしいと思います。

 

hjsmh.hateblo.jp

 はじめましてこんにちは。ネットで何故かタケシとかタカシと称される系の話を丁寧に書いた感じがしました。いわゆる「カーチャン系」という話なのですが、最後に明確に主人公が立ち直る話は開花宣言とリンクしてきれいにまとまったと思います。また、カレーを食べる場面の主人公の不安定な精神状態が言葉を尽くして書かれているのはよかったと思います。

 

nisinao.hatenablog.com

 はじめましてこんにちは。「桜の木の下には死体がある」と断言して世界を作ってその中で完結しているのがいいですね。書きたい風景があって、その風景の描写に徹底しているのは結構大事なことで、どうしても少女が何者だとか説明したくなるのですがこの作品の場合、世界を閉じているのでそういう描写は逆に邪魔になりがちです。最後に2人称にしたことで完全に他者の理解を排した世界であることを考えるとこの描写は効果的であると思います。

 

nerumae.hateblo.jp

 人が木に変身する系の話は古今東西世界各地にあります。卯野さんのお話もそのひとつですね。あっちは男女のお話ですが川本真琴の『桜』に近いものを感じました。「わこちゃん」が実は「かずたか」ちゃんなんじゃないかって思うと個人的に一粒で二度おいしいのがいいですね。あと、たらの芽の天ぷらという小道具がさりげなく登場するところが大好きです。

 

literary-ace.hatenablog.jp

 これめっちゃ好きですね。さりげない視点移動に時間経過で心情の変化もわかりやすいし、無色透明な気配に波風を立ててざわざわさせる感覚がいいです。ヤマウチの存在そのものが桜の開花に繋がっている感じがして、きれいな読後感もいいです。ところで手紙はどこから沸いたのか少し気になりました。ヤマウチ本人が書いたとも思えないので、これは桜の仕業に違いないと勝手に思うことにしました。こうして願いはかなえられたのですね。

 

kannno-itsuki.hatenablog.com

 はじめましてこんにちは。ぶっちゃけめっちゃ好きです。昔の日本を舞台にしてところどころ現代には馴染みのない言葉がありますが、丁寧な描写でその雰囲気ごと舞台装置の一部にしている感じが伝わってきました。読後のふわふわとした夢心地が気持ちよく、ひとつの夢幻能を見たあとのようです。死者から舞を習う、というモチーフが夢幻能の作りに近いですね。趣があっていいです。

 

tuchinoco.hatenablog.com

 ハムスターのさくらさんの話です。ハムスターの生態について語り手がさくらさんの気持ちを代弁している形で話が進みます。少し気になったのが、この「語り手」は一体誰に語りかけているのかということです。人間に向かっているというより、ハムスター仲間がさくらさんの噂をしているような印象を受けました。その辺もっとハートフルにはっちゃけても面白くなるのかなと思います。

 

baumkuchen.hatenablog.jp

 今回で出会いと別れを桜で一番純粋に表現した作品だと思います。出会いの先に桜があり、別れの景色にも桜がある。桜に限らずこういうさりげないリフレインがそれぞれの人生に何かしらの象徴を与えているのでしょうか。それにしても桜の木って少女が似合うのは何故ですかね。桜の名前のついている神様が女だからですかねぇ。

 

xkxaxkx.hatenablog.com

 お久しぶりです。第0回以来なのですが、その語り口の変わらなさに驚きました。端的に言えばオンリーワン、文章に色がついているなという感じです。文章や物語構造って作者の地が透けて見えるので、そこにオリジナルがある人は強いと思うのです。設定で暴れがちな「不条理」というジャンルをきちんと乗りこなしている感じ、非常に大好きです。

 

konohanablog.hateblo.jp

 「春はきらいだ。未来を想像させるから」というフレーズが中心になっていて、周りの事象がこの言葉を生かすために存在している気がしました。それだけこの言葉に力があるなぁと思うのです。「こういう言葉が書きたいからこういう場面にしてみよう」って思うと、するすると絵が浮かび上がってくるインスピレーションも大事ですよね。非常に詩的な一編だと思います。

 

masarin-m.hatenablog.com

 前回神様にお願いしたお話の続きですね。まさりんさんのお話は登場人物が連作で登場して、時間の流れや話の流れも続いているんですがひとつひとつで読んでも世界が完結しているのが素晴らしいです。どうしても連作にすると読者に甘えるところが出てくるのですが、きちんと目の前の情景を忠実に描写できるのはすごいと思います。あと「桜は罪だと小ジャレた節回しをした歌詠みの坊主」というのは「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」でしょうか。この歌をそう形容するのも大胆で好きです。

 

harubonbon.hatenablog.com

 汽車が当たり前のように登場しているので戦前くらいの話ですかね。金田一耕介がやってこなかった閉鎖的な村の印象を受けました。普通に考えれば家に縛られた雄一郎がサクラと結ばれるのが幸せなんでしょうが、このサクラも山の精と考えると雄一郎がユミに気持ちがいかないように仕向けて雄一郎を山に引きずり込もうとしたような気もします。山に魅入られて人里になじめなかった人間の話として読むと、更に違う味わいがありますね。

 

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

 第0回のおまけ以来の本格的な初参加ありがとうございます。桜の木の下の重箱の死体の話が中心になりそうですが、寒い中飲む冷たいビールでお花見と言うのもかなり現実味があって好きです。あの冷え切った場所で寒くなる話をする、という感覚に訴える部分もなかなか凝っていると思います。夜桜見物はいいと思いますが、一桁の気温下ではビールを飲むというのは自分の中ではナシなんですね。

 

ao-rui.hatenablog.com

 世にも奇妙な物語で映像化したらカルト的な人気が出そうな読後感です。日常から非日常へ、更に不条理へ転落していく過程に一切説明がなく、更に不条理が次第に主人公を取り囲んで逃げられないよう名前を呼ぶ、というのもなかなか恐ろしい感じですね。ところで「刹那に散りゆく定め」というのは「鉄砲玉」のことでしょうか……ううむ、奥が深い。

 

otenki.hateblo.jp

 はじめましてこんにちは。漫画をそのまま文字に落とし込んだ感じが伝わってきました。こうしてみると漫画と小説の表現の仕方って結構複雑だなぁと思います。キャラクターの書き分けという観点で見ると漫画と言うのは見た目で変化をつけられる分小説で書き分けをするのとはやり方が大幅に違うもので、今後三人の性格の違いをクローズアップしたものがあれば見てみたいなと思いました。

 

nancy-jo.hatenablog.com

 はじめましてこんちには。若い男の子が童貞卒業後に「俺は女を知ったぜ!」みたいなテンションになる奴の女子高生バージョンとして読みました。何故か繊細に書かれるのが前提の女の子の性の事情を違う切り口で書いているのは面白いですね。さりげなく子供が登場することで女性にとっての性の最終到達点は「子供を成す」であるなぁと思いました。それをよしとするか否かの後半の主人公の心の動きも楽しく読めました。

 

gokumatrix.hateblo.jp

 儚い恋愛に心が動くお話ですね。異類婚譚の要素も取り入れながら、このお話は末法の世の56億7千万年後に救済のために現れるとされる弥勒菩薩が元になっています。「56億7千万年後」と具体的な数字はありますが要は小学生の「俺カードダスいっせんまんまい持ってんぜー」というのと一緒で「遠い未来」の比喩表現と考えられています。それにしてもぽっと出と言いながらこのアイディアを組み合わせるところからすごいなと思います。

 

zeromoon0.hatenablog.jp

 最後に宣伝用の自分の奴。主題としては形骸化した慣習をカン助の視点で見るとどうなるか、というものなのですが形骸化に特化した結果カン助が全く活躍しない木偶の坊に成り下がると言う事態になってしまいました。時代設定にこだわりはとくにありません。カン助が書きたかっただけです、ハイ。

 

 

 以上、今回の勝手に頑張ったで賞は「桜の嘘 (第6回 短編小説の集い 参加作) - ライティング・ハイ」、次点は「「花闇」 (第6回短編小説の集い 参加作) - 菅野樹のよもやま」です。決め手は説明しきらずに状況を把握させるという点です。世界を作ってしまえば後は引きこむだけ、というのは強いですね。

 

 それでは今回はじめての人も常連の方もお疲れ様でした。感想についてはこのブログに言及していただければ拾いに行きます。バシバシ言及してくださいね。

 

 では次回のお題発表でお会いしましょう、 あでゅー。